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      メール・マガジン

★「FNサービス 問題解決おたすけマン」★

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★第006号     ’99−07−30★

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  悩む人、悩まぬ人

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●クーラーなんか無かった

 

時代というものを、皆さん、ご想像願えますかな?

外回りから帰れば汗ビッショリ。思わず「いやー、暑い暑い」。

 

誰だって言う、と思うだろうけれど、ちょうど1900年生まれ、「明治

の男」だった私の父が、そんな無益な言葉を口にしたことは全くない、と、

その妻である母すらが感心していたし、父の汗を拭う姿がむしろ嬉しそう

だった、と私も記憶しているくらいです。

 

まことに我慢の人で、決して弱音を吐かなかった。じゃ、よほどキビシイ

人なのか。うーん、たしかに自分自身には、、ね。けれども、「慈恩院」と

冠せられた戒名が語る通りで、春風駘蕩、ひと様に対しては、この上なく

優しかった。 もう遙か昔に絶滅した人種の一人、、、と言いましょうか。

 

 

その世代の人としては別に不思議でもなく、高等小学校を出ただけ。丁稚

奉公を経て、オトナになった。そのせいで(というのは私の推測ですが)、

いわゆる学歴コンプレックスは多少あったように思いますな。あいまいに

言わざるを得ないのは、そう、と分かる場面が極めて少なかったからです。

 

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表情や言葉が穏やかで分かりにくかった、のは事実。その中で、いくらか

確信をもって「そう」だったと言える現象が一つだけありました。それは

「悩む」という行為に、意義を全く認めなかったことです。ひそかに軽蔑

すらしているらしいことが、漂うニュアンスで、私には分かりました。

 

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たとえば誰かを指してチラリ、「なまじ、インテリだからな」とだけ。

体を張って働き抜くもの、と人生を割り切った男には、「悩む」とは即ち

ヒマ人の証拠、としか映らなかったのでしょう。真の男としての気合いで

働いたことのないやつだから、そんなことしか言えないのさ、、の感じ。

 

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それにしては、息子に学歴を期待する傾向がありました。その時代の人に

よくあった、もう一つのこと、かも。自分の若かった頃に満たせなかった

向学心を、息子に託して実現しよう、としたのでしょうな。何だか理屈に

合わないが、親をガッカリさせたくはない。私も進学しました。が、その

結果、父の言う「インテリ」になってもまずい。大いに気を遣いましたよ。

 

心がけが実を結んだか、私も、暑い寒い、クタビレタ、を言わない人間に

なりました。 だから、それを言う人のことは、やはり尊敬しないのです。

 

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●いわゆる「インテリ」

 

には、時に「青白き」などが伴ない、何やら行動性の欠如を感じさせる語感

がありますね。気力・体力で勝負する男には「真っ黒になって」働く、とか、

別の色が割り当てられます。 まさに、白と黒のコントラスト、、、ですな。

 

「インテリ」は知力・思考力が持ち味。ジッとしていてもアタマは働きます。

だから、やたら考えるのが専門、の人もいる。でも、何を? どのように?

 

 

人間は必ずしも「悲しいから泣く」のではなく、「泣くから悲しい」のだ

という説があります。それと同じく、必ずや「悩みがあるから考える」の

ではなく、「考えるから悩むことになる」人も多いのではあるまいか?

 

父が憐れんだのは、そのような考え方をする人たちだろうと思います。

それなら、なぜ、せっかくの「考え」が「悩み」にしかならないのか。

 

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いますよね、「アタマはいいんだろうけど、話が抽象的でさ」と言われる人。

批判的評価を下されてしまう理由は、、、多分、そのアタマの良い人の言葉

が、(たとえ真実を宿してはいても)現実的迫力を欠くから、でしょうな。

 

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「抽象」とは、いくつかの現「象」の中から、共通の要素を「抽」出する、

かなり高度な頭脳的作業であります。だからアタマを使えば使うほど、即ち

抽象の度を高めれば高めるほど、現実からは遠ざかってしまう結果になる。

 

それは人間ならばこそ可能な作業、理性の証明でもあります。イヌやネコに

出来ることではない。しかもこれからバーチャルの時代、むしろその能力が

ますます求められるはず。 諸君、もっと抽象能力を磨こうじゃないか!

 

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ただし、リーダーの発する言葉が抽象的なの困りますぜ。聞かされる側は、

お説ごもっとも、とうなずかざるを得ない。本質ズバリ、でしょうからね。

 

しかし、そこまで。それでは何も始まらない。お題目さえ唱えりゃ働き始め、

任せておけば隆々たる成果を挙げる部下なんているわけがない。結果として、

言う方は言うだけ、聞く方は聞くだけ。 これじゃ、良いことは起こらない。

 

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何を言っても動いてくれないという悩みが、一つ増えるだけのことです。

即ち「抽象的」の人は、悩むだけの人でもある。 これは尊敬しにくい。

 

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●悩まない人

 

が本当に悩まないものか、個人差もあるでしょうから、断言は出来ません。

しかし行動すれば、精神機能の相当部分がそれに当てられ、「悩む」方へ

の配分はそれだけ減る勘定。 悩み方が浅くなる、、悩まなくなる、、。

 

 

集中力をさらに高め、行動に徹すれば、エネルギーは大方そちらで消費され、

「悩む」のに使う分が残らない、、だろう。無限ではあり得ないのだから。

全エネルギーを建設的な方向で使う。これが、悩まない人になるコツです。

 

公平のために告白しますが、実は「悩まない男」も胃潰瘍を患ったのです。

頑健だった父に、悩みが無かったわけではない。二度も戦争に召し出され、

戦災で工場を失い、仕事の相棒には裏切られ、、苦労は山ほどありました。

 

が、黙々、ひたすら行動に徹した。 苦労をともにしたい、と思わせた男。

 

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言うまでもなく、行動とは具体的なものです。目に見える「かたち」がある。

「抽象」の反対は「具象」。象(かたち)を具(そな)えているということ。

 

ここに気づけば、悩まないリーダーになれます。 何を言うにも、具体的に!

嫌う人が少なくないのを承知で例に引かせて頂くが、ビル・ゲイツは、その点

でも優れておりますな。  (翔泳社 '95年刊「ビル・ゲイツ」p.197)

 

  「ビルは、マイクロソフトがどの辺に位置しているのか、当面どんな

  重要問題を抱えているのか、何が彼を駆り立てているのかを、いわば

  絵に描くように説明し、、、、」、と、、、が語る。

 

「絵に描くように説明、、」、これぞリーダーシップの基本、ではあるまいか。

 

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父と私、これは親子ですから以心伝心、多くの言葉を要しませんでした。が、

管理職が率いるのは、普通、他人様でしょう? これは言わなきゃ動かない。

 

言うなら、すべきことは何か、目に見えるように言うこと。また、書くこと。

そして自ら動いて、それを実行に移すこと。 悩むヒマ? あり得ませんよ。

 

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ただハッパかけるわけじゃない、というところが「おたすけマン」の親切。

「言う」について、ちょっとしたアドバイスを提供しておきましょう。

 

   ■これ、やろう。 あるいは、 やってくれ。 1行で言うこと■

 

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●そんな簡単には行かない、

 

ですか? 反対はしません。色々あるだろう、コンガラガッてもいるだろう。

それを1行で? 言えるわけないよ。 思っても、いきなりそうは出来ない。

 

でも、あわてるな、焦るな。 Take it easy! 「いきなり」を求めないこと。

 

 

あなたのアタマにある、マズイとか、大変だ、のイメージ。 直感?直観?

それは右脳の働きです。あなた一人の力で何とか出来る問題なら、あなたの

意思ひとつ。「不言」実行も可能です。 でも、私は「有言」実行主義。

 

しかし今どき、一人で片付くことは少ない。何であれ、あなた一人のせいで

生じた問題なんか無いでしょう。 そうなるまでに色々なことがあったはず。

 

また現在、そのマズイや大変の中に、何人かの顔ぶれが思い浮かぶはずです。

 

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それらを全部ひっくるめ、一挙きれいに片付ける、、ことは何人がかりでも

出来ない、、はず。うん、出来ない。なら、違う考え方で行くことにしよう。

 

つまり「ひっくるめる」の反対、バラバラにしよう、という提案。たとえば、

 ▼A部門との共同作業がはかどらなくて、アタマに来ている。

 

   この場合、後半分はあなたの個人感情。ご自身で始末すること。

   ただし、「A部門B氏の非協力」に腹が立つ、ということなら、

   「B氏の協力を獲得する方法を見つけよう」とでも。 1行でしょ?

 

はかどらない原因は、一つではないはず。バラバラにしましょう。その一つ、

C社からの資材供給が遅れたこと、あれ何故だったの? え、分かってない?

じゃ、「C社X資材、納入遅れの原因をつかもう」だぜ。 ほーら、1行。

 

原因探しも大切だけど、今は促進する方に集中しなくちゃ。なら、共同作業

のY部分、アウトソースしますか? どこへ? いくつかアテはあるけど、、

じゃ、「Y工程作業の外注先を選ぼう」とか。 やはり、1行ですね。

 

いや、外注なら議論は無用。 実績からしても、D社に限るよ、常識だよ。

分かった、それなら「Y作業をD社に発注する件、具体的に検討する」で。

 

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こんな具合です。すべきこと、してもらうこと、みな1行で表現してみる。

それらを並べると、、ウワ、沢山ある。とても一挙には手がつけられない。

なら、何か基準を設け、それに照らして重み付けのマークを施せば宜しい。

 

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それを壁に貼り出し、みんなで眺めます。 うん、こんなもんだな。了解。

じゃ、これ俺がやるよ。きみ、これ頼む。 期限、来週末だ。報告しろよ。

 

こうすれば、指示を受ける側も「悩む」ことなく行動に移ることが出来ます。

自分がすること、ほかのメンバーとの関連、それら一式を理解して行動する

のだから、励みが出る。そして、やり遂げれば充足感が生じ、、、。

 

リーダーとはそのように、好循環を「導き出す」人だ、と私は思うのです。

 

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極めて職位の高い人においては、あるいはソフトがらみの仕事では、そう

具体的には指示できない、そうするとかえってお互いにやりにくくなる、

効果が生じにくい、ということもあり得ます。 どうか、臨機応変で。

 

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それでも「悩む」人は、多分、「悩む」こと自体が大好きでそうするのだ、

と私には思えます。「これほど真面目に悩んでいる者はいない」と自分の

姿にウットリしている、、、のではあるまいか、と。

 

不思議な趣味だ、とは思いますが、それも人生の楽しみ方?の一つかな。

それ、私が妨げたりするものですか。心ゆくまで、どうぞ。

                           ■竹島元一■

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